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離婚に関するご相談

近年、婚姻した夫婦のうち3組に1組が離婚しているという統計もあり、離婚は日常生活の上でも大変身近な問題です。家庭内の人間関係、特に夫婦関係の悪化は当事者にとって大きなストレスをもたらすことは言うまでもなく、夫婦間に子どもがいれば子に与える影響も大きなものになります。夫婦関係をどうしていくか、子どもの親権をどうするかなど、財産関係だけにはとどまらない、人の人生を左右する問題を解決していかなければなりません。
離婚を請求する側、請求された側の双方にとって、早期にご相談いただくことで解決までの道筋を見通すことができるようになり、わずかではあっても心の負担の軽減につながるのではないかと思います。

離婚問題ではどのような手続があるのか?

1.協議

当事者の協議によって離婚に関する合意をし、離婚届を提出する方法です。離婚成立の日は、届出が受理された日です。
相手方が離婚をはじめとする協議事項に了承している場合には、迅速に進めることができることがメリットです。
ただし、養育費等の金銭給付について履行が滞ると、裁判手続を経なければならなくなるというデメリットがあります。対処法として、将来滞ってしまうことに備えて、公正証書にて合意書を作成しておく方法があります。これによって、裁判手続を経た場合と同様に、支払いが滞ったときには相手方の給与や預金等を差し押さえることができるようになります。

2.調停

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、離婚調停を申し立てる方法です。
調停は相手方と別席で行われることが多く、その場合当事者が顔を合わせる機会は数回程度になります。調停委員を介して話を進めていくことになるので、当事者間で顔を合わせると感情的になり話を先に進めることができない場合などには、お互いにとって有効な手続になります。
また、私文書で合意するのとは異なり、合意した養育費等の支払いが滞った場合には、給与等の差押を申し立てることができます。
調停期日は原則として月1回程度であり、解決までにある程度の期間を見込んでおく必要があります。
調停で離婚が成立した場合には、裁判所から交付される調停調書をもって、一方当事者から離婚届をします。離婚成立の日は、届出の日ではなく調停が成立した日になります。

3.訴訟

離婚調停が不成立になった場合には、訴訟を提起するという方法があります。
訴訟において法律が定める離婚原因が認められれば、相手方が争っていても、判決の確定により離婚が成立します。また、親権や養育費等ほかの付随事項についても裁判所が決定します。
訴訟手続は極めて厳格であるため、多くの負担が生じます。主張は書面で提出しなければなりませんし、判決に向けて通常当事者尋問も実施されます。
また、調停よりも解決までに期間を要することが予想されます。勝訴できたとしても控訴・上告といった不服申立ての制度があるため、第1審で終わるとも限りません。

離婚にあたって解決しなければならない課題

離婚自体

離婚を求めるのか、円満調整を求めるのかが問題となります。
離婚を求めたいが相手方配偶者が離婚に同意しないという状況であれば、最終的には離婚原因(①配偶者に不貞な行為があったとき。②配偶者から悪意で遺棄されたとき。③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。)の有無が問題になります。
また、ご自身の不貞行為等によりいわゆる「有責配偶者」と認定されうる状況であれば、離婚を認めてもらうには高いハードルを超えなければなりません。

親権

親権は、離婚するにあたって必ず定めなければならない事項です。そのため、離婚自体については合意ができていたとしても、親権について合意が成立しなければ、離婚は不成立ということになります。調停でも決まらない場合には、訴訟提起を検討しなければなりません。
調停、訴訟において親権が争われる場合には、子の福祉の観点から、どちらを親権者とすべきか、家庭裁判所調査官の調査が行われることもあります。調査の内容として、学校・幼稚園等への聴取、監護親自宅への家庭訪問などがあります。

養育費

監護親が非監護親に対して、子の養育に要する費用として請求するものです。
調停や審判では、養育費・婚姻費用算定表に基づき、権利者と義務者の年収から算出しています。算定表から算出される金額で合意していることが多数と思われます。
支払いの期間としては、通常子が20歳に達する月までとしています。他方で、当事者の合意で、18歳までとする場合もありますし、22歳までとする場合もあります。

面会交流

非監護親と子の間の面会を実施すべきか、実施するとしてどのような内容で行うかについて問題になります。
実施する場合、実施の頻度、日程調整をどうするか、何時から何時まで面会するか、どこで面会するのか、誰が送迎するのか、監護親が立ち会うのか等について、具体的に検討しなければなりません。両親の都合ではなく、子の福祉が最優先事項となります。

慰謝料

当事者のうちの一方に離婚原因がある場合、離婚を余儀なくされたことの精神的苦痛について慰謝料の請求をすることがありえます。事例としては、不貞行為、DV等が主なものですが、それ以外にも慰謝料の原因はありえます。
協議や調停で合意できない場合には、訴訟提起の必要が出てきます。相手方が争う場合、証拠から立証できなければ認められることはありません。

財産分与

夫婦が婚姻して共同生活を送っていた期間において、夫婦で築き上げた財産がある場合、それらは名義の如何を問わず夫婦共有財産であるものとして離婚時に清算する制度です。通常は、婚姻して同居を開始してから別居するまでの期間が対象になります。原則としては、夫婦が2分の1で共有しているものと扱われます。
婚姻中の夫婦の財産には以下のものがあり、②と③は清算の対象となります。

①特有財産(固有財産)

婚姻前から各自が所有していた財産、婚姻中に取得した財産であっても、一方が相続、贈与等、他方配偶者と無関係に取得した財産

②共有財産

夫婦が共有名義で取得した財産、婚姻中その共同生活のために購入した家財道具など

③実質的共有財産

名義は夫婦の一方に属するが、実質的に夫婦の共有とみるべきもの

具体的には、不動産、預貯金、保険、自動車等が対象になります。また、一方配偶者が将来支給をうける退職金について、支給を受けることについて高い蓋然性がある場合には、財産分与の対象になりえます。
債務については、資産の価額が負債の額よりも多い場合には、資産の価額から負債の額を控除した金額を財産分与の対象と扱っています。負債の額のほうが資産の価額よりも多い場合には、財産分与無しという扱いになることが多いと思われます。この場合、別途負担者を定めておく必要があります。
住宅ローンについて、不動産の評価よりもローン残高が大きい場合(いわゆる「オーバーローン」の場合)には、住宅を処分するか否か、残ローンの負担者等を取り決めておく必要があります。
財産分与は、必ずしも離婚の際に請求する必要はありませんが、離婚から2年で消滅時効にかかり、以後法的に請求することはできなくなります。

年金分割

離婚の際、一定の要件に該当したときは、当事者の請求により婚姻期間中の厚生年金保険の記録(標準報酬月額、標準賞与額)を当事者間で分割することができます。

①3号分割制度

国民年金の第3号被保険者につき、相手方が負担した保険料については、夫婦が共同して負担したものとし、平成20年4月1日以降の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金保険の標準報酬を2分の1ずつ当事者間で分割できるという制度です。当事者間の合意は不要で、年金事務所への請求により自動的に2分の1に分割されます。

②合意分割制度

婚姻期間中の厚生年金の記録について、当事者の合意(調停、審判等)により按分割合を定めた場合に、分割できる制度です。原則として離婚の際ないしその後2年以内に請求する必要があります。
合意分割の請求には、「年金分割のための情報通知書」を事前に年金事務所から取得する必要があります。

婚姻費用の分担

夫婦には婚姻から生じる費用を分担する義務があります。具体的には、通常の衣食住の費用のほか、子の教育費・出産費、医療費、交際費等が含まれます。妻の生活費分も含まれていることから、養育費よりは高額になります。通常は、別居から離婚までの間の婚姻費用が問題になります。
夫婦間の協議によりますが、協議によって定まらない場合には、離婚問題とは別に、調停や審判といった裁判手続を利用することができます。調停等による場合には、養育費と同様、算定表に基づいて算出されるのが一般的です。