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倒産処理・多重債務

事業上、生活上において、借入金その他の債務の支払いが滞ってしまうと、業務や生活に支障が生じてしまいます。支払いできないことにより、関係者や家族に迷惑をかけてしまっているという自責の念に駆られることもあるでしょう。債権者から何度も連絡が来ることで追い詰められてしまうこともあろうかと思います。
しかし、そのような経済的な問題は、多くの場合解決することができる問題です。ご相談いただくことで、今後の解決に向けた道筋が見えてくることも多いと思います。

倒産処理(法人)

会社等の企業経営は様々な要因から浮き沈みが生じるものであり、必ずしも努力が実を結ぶとは限らないものです。ときには経営がうまくいかず、資金繰りに窮してしまうこともあろうかと思います。
また、後継者がおらず、廃業を考えているが借入金が残ってしまっているということもあろうかと思います。
いずれの場合も負債の処理を考えていかなければなりません。

1.手続の選択

会社法人については、今後事業を継続していくのか、そしてそれが可能なのかを判断しなければなりません。事業継続を前提とするのであれば、私的整理や民事再生等の手続を検討することになります。これに対し、債務超過の状態で廃業するということであれば破産手続を検討することになります。また、それぞれ代表者が会社法人の債務を保証している場合には、代表者ご自身の保証債務の処理も考えていかなければなりません。

事業継続を目指す場合には、企業価値の減少が進まない段階で適切な対応が必要になります。

また、仮に破産手続を選択する場合でも、事業継続中なのか、既に事業停止しているのかによっても進め方は変わってきます。取引先や金融機関、従業員、租税債権者への対応が必要になります。

どのような手続を選択して準備を進めていくのか、弁護士からの助言や手続関与が不可欠といえます。

2.早期の手続準備

いずれの手続を選択するにせよ、できるだけ早い段階で手続準備に入ることが、周囲への影響を最小限に留めることにつながります。

例えば、仮に破産手続を選択するとした場合でもそのことがいえます。会社財産が残っている段階であれば、そこから手続費用等を捻出することができます。また、従業員の解雇に際して給与等が未払いになるということも避けられるかもしれません(なお、給与が未払いになる場合には、未払賃金立替払制度の利用を検討することになりますが、全額が立替払いされるわけではないこと、解雇予告手当は対象とされていないこと、実際に支給されるのは破産等の申立後数か月先になってしまうことなど、従業員にとって不利な面があります。)。

また、税の滞納があれば、申立て等の準備中に滞納処分を受ける可能性も高く、あてにしていた入金が無くなってしまうこともありえます。

そして、代表者ご本人もあわせて破産手続をする場合には、自由財産として一定程度の財産の所持が認められる可能性があるところ(原則として一定の財産のうち99万円までの財産)、通常これを以後の生活にあてていくことになりますので、ご本人の財産が尽きる以前に手続に入らなければ、今後の生活再建に支障が出てきてしまいます。

何よりも、代表者ご本人にのしかかる精神的な重圧は非常に大きいものです。どのような方向性で進めていくにせよ、法律専門職に話をすることだけでも解放される部分があるはずです。

以上のようなことを踏まえれば、早期に手続準備に入るのが望ましいといえます。

3.手続費用

破産申立てを選択する場合、手続費用として、弁護士費用、官報公告料等の実費のほか裁判所予納金も必要です。裁判所予納金の額としては、法人について通常50万円、代表者も同時に破産手続を進める場合には法人分に加え通常30万円になります(ただし、山形地方裁判所の場合。事案によって通常の額よりも多くなる場合もあれば、少なくなる場合もあります。)。

このように手続を進めるにあたっても相当額の現金が必要になりますので、先に述べたとおり、早めのご相談が望ましいといえます。

多重債務(個人)

住宅新築のため、生活費をまかなうため、急遽必要になった費用を工面するためなど、借入の理由は人それぞれです。また、収入が減少するなど、当初見込んでいたように返済ができないこともあります。
個人の債務整理の方法は、大まかにいえば①自己破産、②個人再生、③任意整理の3種類があります。いずれの手続も生活再建を目的に進めることになりますが、どの手続をとるかによってその後の生活に大きな影響を及ぼすので、慎重に判断する必要があります。

1.自己破産

個人の自己破産は、債務の免責を目的として行う手続です。
免責を受けられれば、以後債務の支払義務はなくなります。ただし、浪費・ギャンブル、手続における虚偽の報告等などは、免責を許さない方向の事情として考慮されてしまいます。

また、破産手続は債権者全員を対象に進める必要があります。各債権者

は原則として平等であり、破産手続前後に特定の債権者のみ優遇するような行為は許されていません。したがって、住宅ローン、自動車ローン、友人知人やお世話になった取引先などを優先して支払うということはできません。

破産管財人が手続に関与すべきとされる事案(実務上「管財事件」と表現しています。)においては、裁判所から破産管財人が選任されます。この場合には原則として裁判所予納金を納めなければなりません。予納金の目安は通常30万円、一定の場合には例外的に20万円とされており、申立てまでに現金で準備する必要があります(ただし、山形地方裁判所の場合)。選任された破産管財人は、財産の管理処分権を持ち、財産を売却し、債権者に配当等をする職務にあたります。また、債務を免責することが相当かどうかの調査をする職務もあります。

他方、ほとんどめぼしい財産がない場合など一定の場合には破産管財人の選任はなく(破産手続が開始と同時に廃止されることから、実務上「同時廃止事件」と表現しています。)、上記のような裁判所予納金は生じません。また、破産管財人が不在となるため、財産の処分もありません。

2.個人再生

個人再生は、一定のルールのもとに債務が減額される手続です。
破産手続と同様、債権者全員を対象に行う必要があり、各債権者は原則として平等です。再生手続前後に特定の債権者のみ優遇するような行為は許されていません。

個人再生においては、以下の基準①②から算出される額のうち、高いほうの額を返済する必要があります。返済期間は、原則として3年、特別の事情がある場合には5年まで延長することができます。さらに、一定の要件を充たす場合には、住宅ローンのみ約定どおりに支払続けることも可能です(「住宅資金特別条項」)。

①最低弁済額の基準
100万円未満の場合  負債額全部
100万円以上500万円未満の場合  100万円
500万円以上1,500万円未満の場合  負債総額の5分の1
1,500万円以上3,000万円以下の場合  300万円
3,000万円を超え5,000万円以下の場合  負債総額の10分の1

②清算価値保証の基準・・・保有する財産(破産手続を取った場合に処分が必要となる財産)の額以上の額を弁済しなければならないという基準

返済総額に関する例としては、次のとおりです。
ケース1)負債の総額が1200万円であるところ、破産手続を取った場合に処分が必要となる財産が200万円である。
→①の基準から240万円、②の基準から200万円となり、より高額の240万円が返済総額になります。
ケース2)負債の総額が1200万円であるところ、破産手続を取った場合に処分が必要となる財産が300万円である。
→①の基準から240万円、②の基準から300万円となり、より高額の300万円が返済総額になります。

個人再生は、ギャンブルや浪費が負債の原因であったとしても利用することができます。そのため、破産手続での免責が厳しいと思われるようなケースでは、手続選択の第1候補になります。また、上記のとおり、住宅ローンを約定どおりに支払い続けながら他の債務を減額できる制度であるため、住宅を確保したい場合にも利用を検討してくことになります。

3.任意整理

任意整理は、各債権者と個別に交渉・和解することによって、現在の債務残高を分割で返済する手続です。

分割払いの回数としては通常36回(3年)ですが、取引の実情に応じて変わってきます。利息制限法を超過した利息を支払っていた場合などを除き、通常債務の減免はありません。ただし、将来発生する利息を免除してもらえるケースが多数です。

原則としては、債権者は平等に扱う必要があります。事情によって特定の債権者のみ手続に入れないこともありえますが、後に破産手続等に方針を変更した場合には、債権者平等原則違反を指摘されうることになります。